【第17回】未来のお金はどうなる?「想定利回り」と「インフレ」のリアルな数字
第16回では、ご自身の年金額から逆算して「老後の目標金額」を計算する方法をお伝えしました。
しかし、実際に長期の資産形成プランを立てる時、もう一つ大きな壁にぶつかります。それは「投資の利回り(増えるスピード)はどれくらいで見積もればいいの?」そして「将来、モノの値段(インフレ)はどうなっているの?」という疑問です。
今回は、過去のデータをもとにした「保守的・楽観的」なシミュレーションを通じて、未来の不確実な数字とどう向き合っていけばいいのかを考えていきましょう。
1. 投資の「想定利回り」は何%で計算する?

積立投資のシミュレーションをする際、基準となる「利回り(年利)」を設定する必要があります。 過去約30年のデータを見ると、私たちが投資するインデックスファンドの平均的な利回りは以下のようになっています。
- 全世界株式(オルカン): 年平均 約6%〜8%
- 米国株式(S&P500): 年平均 約8%〜10%
これを踏まえて、将来のシミュレーションをする際は、以下の2つのシナリオを持っておくのがおすすめです。
- 楽観的シナリオ(年利 7%〜8%): 過去の力強い成長が今後も続くと仮定した、理想的なペースです。
- 保守的シナリオ(年利 4%〜5%): 将来、経済の成長スピードが少し落ちたとしてもクリアできそうな、安全寄りのペースです。
最初は、より安全な「保守的シナリオ(4%〜5%)」で計画を立てておくのが、途中で焦らないための鉄則です。
2. インフレの猛威!30年後の「生活費」はどうなる?

投資でお金が増える一方で、私たちが気をつけなければいけないのが「日本のインフレ率(物価上昇)」です。 日本において年率3%以上のインフレが何十年も続くことは考えにくいため、ここでは日銀が目標としている「2%」を保守的なライン(これくらいは上がるだろうという備え)として計算してみます。
現在、「月々40万円」あれば今の生活水準が維持できているご家庭を例に、30年後に全く同じ生活水準を維持するためには毎月いくら必要になるのかを見てみましょう。
- 年 1%上昇の場合【楽観的】(物価がゆるやかに上がる) 👉 30年後に必要な月々の生活費:約54万円
- 年 2%上昇の場合【保守的】(日銀の目標通り上がる) 👉 30年後に必要な月々の生活費:約72万円
※現在「月40万円」の生活費が、毎年複利で上昇したと仮定した場合の概算値。
いかがでしょうか。もし日本が目標通り「年利2%」のインフレを30年間続けた場合、今の40万円と同じ生活をするためには、30年後には毎月「72万円」も必要になるのです。「インフレの罠(第5回)」の恐ろしさが、数字にするとハッキリ分かりますよね。
3. 未来のことは誰にもわからない。だから「自分で決める」

「えっ、30年後に月72万円も必要なの!? じゃあ老後資金の目標額も数千万円じゃ全然足りないじゃないか!」とパニックになる必要はありません。
なぜなら、インフレが起きてモノの値段が上がれば、それと連動して企業の売上も上がり、あなたが投資している株式(インデックスファンド)の利回りも一緒に上がる傾向があるからです。
【 株の利回り ー インフレ率 = 本当のリターン(実質利回り) 】
インフレ率が上がっても、株の利回りがそれを上回ってくれれば、あなたの資産の実質的な価値はしっかり守られます。これが、現金の貯金だけでなく「株式」を持っておく最大の理由です。
とはいえ、30年後に実際のインフレ率が1%なのか2%なのか、株の利回りが5%なのか8%なのかは、誰にも予言できません。 だからこそ、「色々なパターンをシミュレーションしてみて、これなら自分たち家族は大丈夫だと思えるライン(積立額)」を、各々で決めていくしかないのです。
金融庁のサイトなどにある無料のシミュレーションツールを使い、「毎月の積立額」と「保守的・楽観的な利回り」を動かして、ご自身の未来を色々と計算してみてください。
第17回のまとめ

- 想定利回りは、楽観的(7〜8%)と保守的(4〜5%)の両方で考えておく。
- インフレが続けば、将来必要な生活費の額面は大きくなる(年2%上昇で30年後には約1.8倍に)。
- インフレとお金の増え方は連動するため、株式を持つことが一番の対策になる。
- 未来は誰にも分からないため、シミュレーションを繰り返して「自分たちが納得できる積立額」を見つけることがゴール。
完璧な未来予想図を作ることは不可能です。だからこそ、無理のない範囲で積立投資をスタートし、年に1回くらい家族で「今のペースで大丈夫そうかな?」と見直しながら、しなやかに対応していくのが最も賢い資産形成の形です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任で行っていただきますようお願いいたします。

